体 温II
体温調節システムとその適応
  • 編集:
    井上 芳光(大阪国際大学人間科学部)
    近藤 徳彦(神戸大学人間発達環境学研究科)
  • 定価:
    3,520円(税込)
  • 頁:
    318ページ
  • 判型:
    A5判
  • 発行年月:
    2010年11月
  • ISBN:
    978-4-931411-00-5

内容

 『体温-運動時の体温調節システムとそれを修飾する要因-』(2002年刊)の続編。
 ヒトの身体機能は統合的,多重的に調節されており,体温調節システムも呼吸・循環・体液調節システムと密接に協関している。
 このことは,体温調節システム側からみれば,すべての生体の調節システムは体温変動に伴って修飾されることを意味し,体温調節システムを理解することは他のシステムを検討するためにも有益なことである。
 本書は「体温調節システムがどのように調節されているのか」「暑熱・寒冷・運動刺激に対し体温調節システムが循環・呼吸・体液調節システムなどとどのように協関しているのか」「体温調節システムが各種刺激に対しどのように適応的に変化するのか」との観点から,現在活躍中の方々に最新の情報を含めて執筆いただいた。

目次

第1章 体温調節システムの基礎
I.体温調節研究のあゆみ
 1.E. F. DuBois
 2.John B. Pierce Laboratoryの研究者たち
 3.Harvard Fatigue Laboratory
 4.University of Rochester(ロチェスター大学)
 5.日本における環境生理学
 6.久野先生を支えた方々:第一世代
  6.1 緒方維弘
  6.2 伊藤眞次
  6.3 大原孝吉
  6.4 中山昭雄
  6.5 高木健太郎
  6.6 吉村寿人
II.体温調節システム
 1.体温調節の概略
  1.1 体 温
  1.2 熱出納
  1.3 体温調節反応
 2.体温調節機構
  2.1 調節の原理
  2.2 体温調節の神経機構
 3.運動時の体温調節
  3.1 体 温
  3.2 効果器反応
III.ホルモンと体温調節システム
 1.視床下部-下垂体-甲状腺系と体温調節
 2.視床下部-下垂体-副腎系と体温調節
  2.1 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンとストレス時の熱産生
  2.2 視床下部-下垂体-副腎系と発熱
 3.アンギオテンシンII・ナトリウム利尿ペプチドと体温調節
  3.1 アンギオテンシンIIと発熱
  3.2 ナトリウム利尿ペプチドと発熱
IV.汗腺活動と皮膚血管
 1.皮膚内の構造
 2.神経性調節
  2.1 交感神経活動の測定
  2.2 汗腺の神経性調節
  2.3 皮膚血管収縮システム
  2.4 能動的皮膚血管拡張システム
  2.5 皮膚血管収縮と能動的皮膚血管拡張システムの競合
 3.神経系以外からの発汗および皮膚血管調節
  3.1 液性調節
  3.2 局所性調節
V.汗生成のメカニズム
 1.エクリン汗腺の機能
 2.エクリン汗腺の構造
 3.摘出汗腺からの発汗誘導
 4.導管におけるNaCl再吸収
 5.エクリン汗腺分泌部における汗生成のメカニズム

第2章 体温上昇と熱放散システム
I.運動時の体温上昇とその影響
 1.運動時の体温上昇
  1.1 運動による熱産生と熱移動経路
  1.2 運動強度と体温上昇
  1.3 環境要因と体温上昇
 2.体温上昇に伴う運動能力の低下
  2.1 高温環境と運動能力
  2.2 高体温と持久的運動能力
 3.体温上昇が身体機能に及ぼす影響
  3.1 体温上昇と脱水
  3.2 体温上昇と神経筋活動
  3.3 体温上昇と脳活動
 4.高温環境下における中枢の役割
  4.1 体温調節中枢内の神経伝達物質の役割
  4.2 高体温が引き起こす運動時の疲労における神経伝達物質の役割
  4.3 中枢による運動制御
II.運動にかかわる要因と熱放散システム
 1.運動時の熱放散システム
  1.1 温熱性要因
  1.2 非温熱性要因
 2.運動時の熱放散反応
  2.1 深部体温が一定の場合
  2.2 深部体温の上昇~定常状態時
  2.3 活動汗腺数
  2.4 汗の塩分濃度と発汗漸減
  2.5 その他の動的運動
  2.6 回復時
 3.非温熱性要因とその特性
 4.温熱性要因と非温熱性要因の熱放散反応に対する役割
III.動静脈吻合と熱放散システム
 1.安静時の調節
 2.ヒトの熱放散システムへの貢献
 3.運動初期の調節
 4.運動持続中の調節
IV.体温上昇と血圧調節
 1.暑熱ストレスと仰臥位での血圧反射調節
 2.暑熱ストレスと立位での血圧反射調節
 3.起立時の体温調節反応
  3.1 皮膚血管反応
  3.2 発汗反応

第3章 体温調節システムと呼吸調節
I.体温上昇と換気亢進反応
 1.動物における体温上昇時の換気亢進反応(パンティング)
  1.1 入力刺激と中枢での調節機構
  1.2 呼吸パターン
  1.3 化学受容器との関係
  1.4 脱水による修飾作用
  1.5 安静時と運動時の反応の違い
 2.ヒトにおける体温上昇時の換気亢進反応
  2.1 入力刺激と中枢調節機構
  2.2 呼吸パターン
  2.3 化学受容器との関係
  2.4 脱水による修飾作用
  2.5 安静時と運動時の反応の違い
 II.ヒトにおける暑熱下運動時の換気調節
 1.運動時の換気調節
  1.1 運動時の換気亢進メカニズム
   1.2 漸増負荷運動時の換気調節に対する体温上昇の関与
 2.暑熱下運動時の換気亢進反応
  2.1 入力刺激と中枢調節機構
  2.2 呼吸パターン
   2.3 化学受容器との関係
  2.4 脱水による修飾作用
  2.5 運動トレーニングや暑熱順化による影響
  2.6 換気亢進の深部体温閾値
 3.体温上昇によって換気が亢進する意義

第4章 体温調節システムと体液調節
I.体温調節システムと容量調節
 1.体液調節と体温調節のかかわり
  1.1 行動性体温調節
  1.2 自律性体温調節
 2.体液量の調節システム
  2.1 安静時の体液の分布
  2.2 安静時の体液組成
 3.体液分布,体液量の決定因子
  3.1 Starlingの法則
  3.2 腎 臓
  3.3 重力,圧受容体
 4.運動時の体温上昇と体液変化
  4.1 運動に伴う体液量,体液分布の変化
  4.2 運動に伴う体液組成の変化
  4.3 暑熱環境下での運動
  4.4 運動と腎臓
 5.運動トレーニング,暑熱順化と体液
II.体温調節システムと浸透圧調節
 1.血漿浸透圧の上昇が体温調節に及ぼす影響
  1.1 血漿浸透圧上昇による体温調節反応抑制パターン
  1.2 浸透圧調節性の体温調節反応抑制のメカニズム
 2.体温上昇が浸透圧調節系に及ぼす影響
 3.運動による体温調節反応の修飾における浸透圧調節系の関与
 4.暑熱順化による体温調節機能亢進における浸透圧調節系の適応の関与
III.運動と水分摂取
 1.暑熱環境の評価
 2.スポーツ活動時の発汗量・飲水量と環境温度
  2.1 身体の水分出納と運動時の水分バランス
  2.2 スポーツ現場での発汗量と飲水量の実態
  2.3 給水方法と摂取率
  2.4 口渇感と飲水行動
  2.5 休憩と飲水の効果
 3.脱水と有酸素運動・無酸素運動能力
 4.暑熱障害
  4.1 熱中症の発生実態
  4.2 運動時熱中症発生の実態
  4.3 運動時熱中症の予防
  4.4 気をつける5つのポイント

第5章 体温調節システムと短期・長期順化
I.運動トレーニングと暑熱順化
 1.暑熱順化の発現と消失
 2.暑熱順化の作用と機序
  2.1 発汗機能
  2.2 汗の成分
  2.3 皮膚血管拡張機能
  2.4 循環血液量
II.運動トレーニングと寒冷順化
 1.寒冷時の体温調節反応
  1.1 皮膚血管収縮反応
  1.2 熱産生
 2.耐寒性の評価法
  2.1 局所耐寒性
  2.2 全身耐寒性
 3.局所耐寒性への運動トレーニングの効果
 4.全身耐寒性への運動トレーニングの効果
  4.1 皮膚血管収縮
  4.2 熱産生
III.民族差と短期・長期暑熱順化
 1.短期暑熱順化
 2.中枢性および末梢性要因
 3.季節順化
 4.長期暑熱順化
 5.民族差?(遺伝因子と環境因子)
 6.短期暑熱順化 vs 長期暑熱順化

第6章 体温調節システムと適応的変化
I.発育と老化
 1.暑熱・運動時の熱放散反応
  1.1 発 育
  1.2 老 化
 2.高温下の循環特性と体液バランス
  2.1 発 育
  2.2 老 化
 3.寒冷下での体温調節
  3.1 発 育
  3.2 老 化
 4.運動トレーニング・暑熱順化の影響
  4.1 発 育
  4.2 老 化
II.性周期・性差
 1.性周期の影響
  1.1 安静時の深部体温
  1.2 熱放散反応
 2.性差の影響
  2.1 身体特性
  2.2 熱放散反応
 3.運動トレーニングの影響
  3.1 長期運動トレーニング
  3.2 短期運動トレーニング
  3.3 運動トレーニング効果の性差
III.概日リズム
 1.深部体温の概日リズムに伴う熱放散反応の日内変動
  1.1 発汗反応
  1.2 皮膚血管拡張反応
 2.熱放散反応へのメラトニンによる修飾作用
 3.寒冷刺激時の皮膚血管収縮反応における日内変動
IV.時間記憶
 1.温熱負荷に対する時間記憶の形成
  1.1 暑熱曝露の方法
  1.2 深部体温の変化
  1.3 自律性体温調機能の変化
  1.4 行動性体温調節機能の変化
  1.5 循環機能の変化
 2.運動に対する時間記憶の形成
 3.時間記憶の意義と応用
V.衣服の影響
 1.衣服の熱抵抗と蒸発熱抵抗
 2.衣服の熱抵抗・蒸発熱抵抗にかかわる要因
  2.1 素材布
  2.2 重ね着
  2.3 気 流
  2.4 衣服換気量
 3.寒冷環境におけるスポーツウェア
 4.高温環境におけるスポーツウェア
 5.熱放散に優れたスポーツウェア開発への衣服換気量に基づくアプローチ

用語解説

序文

著者一覧

井上 芳光,近藤 徳彦,森本 武利,彼末 一之,渡邊 達生,芝﨑 学,嵯峨 賢次,長谷川 博,山崎 文夫,藤井 直人,西保 岳,林 恵嗣,永島 計,鷹股 亮,中井 誠一,前田 享史,松本 孝朗,一之瀬(桑原) 智子,青木 健,紫藤 治,上田 博之,George Havenith