骨格筋のバイオメカニクス
筋線維から運動協調性まで
  • 著:
    Vladimir M Zatsiorsky,Boris I Prilutsky
  • 監訳:
    関屋 曻(昭和大学保健医療学部)
    宮川 哲夫(昭和大学保健医療学部)
    高橋 正明(群馬パース大学保健科学部)
  • 定価:
    5,060円(税込)
  • 頁:
    488ページ
  • 判型:
    A5判
  • 発行年月:
    2014年12月
  • ISBN:
    978-4-905168-33-1

内容

 身体運動のバイオメカニクス研究のエキスパートであるVladimir M. ZatsiorskyとBoris I. Prilutskyによって書かれた“骨格筋に焦点をあてたバイオメカニクスの包括的テキスト”である。
 スポーツ科学,体育学,バイオメカニクス,運動制御,人間工学,理学療法,作業療法,リハビリテーション医学,医用生体工学など,ヒトの身体運動の理解に関心のある読者のために書かれた。
 筋線維レベルから運動協調性レベルまでを8つの視点から論じており,筋の構造,受動特性,活動筋特性,エネルギー吸収,身体内の筋活動,二関節筋,遠心性活動,筋協調性について,非常にわかりやすく述べられている。
 第1部と第2部から構成され,第1部では単一筋の力学的ふるまいを取り上げ,第2部では生体内(in vivo)での筋のふるまいに関して,ヒトの身体運動におけるさまざまな問題を扱っている。
 筋バイオメカニクスの基礎的なテキストと最先端研究の間には大きなギャップがあるが,本書はその間の橋渡しをする本としてたいへん有用なものになると期待する。

目次

第1部 筋の構造と力学
第1章 筋の構造
 1.1 筋束とその配列
  1.1.1 平行線維筋と紡錘状筋
  1.1.2 羽状筋
   1.1.2.1 羽状筋の平面モデル
   1.1.2.2 三次元羽状構造
  1.1.3 収束筋と輪状筋
 1.2 筋束の弯曲: Frenet座標系
 1.3 筋束中の筋線維構造
 1.4 線維強化複合体としての骨格筋
 1.5 筋線維長,筋束長および筋長:長さ−長さ比
  1.5.1 筋線維長と筋束長
  1.5.2  長さ−長さ比
 1.6 筋経路:筋図心
  1.6.1 筋経路の直線表現
  1.6.2 筋経路の図心モデル
  1.6.3 弯曲筋と巻きつき筋
  1.6.4 ねじれ筋
  1.6.5 複数の骨に付着する筋
 1.7 生理学的および解剖学的横断面積
 1.8 筋付着領域
 1.9 まとめ
 1.10 復習問題
第2章 腱と受動筋の特性
 2.1 腱と腱膜の生体力学
  2.1.1 弾性的ふるまい
   2.1.1.1 応力−歪み関係
    2.1.1.1.1 つま先領域における応力−歪み関係
    2.1.1.1.2 直線領域の応力−歪み関係
   2.1.1.2 腱張力
   2.1.1.3 腱と腱膜の張力と伸長
   2.1.1.4 腱と靱帯のための構成方程式
  2.1.2 腱の粘弾性的ふるまい
   2.1.2.1 粘弾性の基本的な概念
   2.1.2.2 腱の粘弾性特性
    2.1.2.2.1 腱の計算モデル
    2.1.2.2.2 腱の力学的性質に影響を及ぼす因子
  2.1.3 腱と周辺組織の相互作用
   2.1.3.1 腱間の剪断力と横力伝達
   2.1.3.2 指間結合行列
   2.1.3.3 腱と周囲組織間の滑り抵抗
   2.1.3.4 腱ラッピング
   2.1.3.5 弓 弦
   2.1.3.6 腱の特性と筋機能
   2.1.3.7 筋腱の構造指標
 2.2 受動筋の力学特性
  2.2.1 筋緊張:等張力測定
  2.2.2 弛緩した筋の力学的特性
   2.2.2.1 弾性特性
   2.2.2.2 受動筋の粘弾性特性:関節の受動運動抵抗
 2.3 関節柔軟性
 2.4 まとめ
 2.5 復習問題
第3章 活動筋の力学
 3.1 筋張力産生と伝達
  3.1.1 実験的方法
  3.1.2 静止から活動への移行
   3.1.2.1 筋活動状態
   3.1.2.2 ヒトにおける力の発生:力発生速度
  3.1.3 活動状態から静止への移行:筋弛緩
  3.1.4 筋容積の不変性
  3.1.5 力伝達と内部変形(歪 み)
   3.1.5.1 筋線維内の力伝達
   3.1.5.2 筋内力伝達:筋線維張力の総和
    3.1.5.2.1 平行線維筋と紡錘状筋
     3.1.5.2.1.1 筋線維の不均一な短縮
     3.1.5.2.1.2 筋線維張力の非線形和
    3.1.5.2.2 羽状筋
     3.1.5.2.2.1 力の伝達
     3.1.5.2.2.2 速度伝達:構造ギア比
  3.1.6 筋内圧と応力
   3.1.6.1 固有筋力
   3.1.6.2 応力テンソル
   3.1.6.3 筋内流体圧
    3.1.6.3.1 静水圧と浸透圧
    3.1.6.3.2 筋内圧に影響を及ぼす因子:Laplaceの法則の適用
    3.1.6.3.3 筋内圧の生物学的機能:筋区画症候群
 3.2 関数関係
  3.2.1 力−長さ関係
   3.2.1.1 力−長さ曲線
   3.2.1.2 活動張力−長さ曲線の背後にある機序
   3.2.1.3 筋安定性の問題
   3.2.1.4 最大下の力−長さ曲線
   3.2.1.5 身体中の筋長:力−長さ曲線の発現領域
  3.2.2 力−速度関係
   3.2.2.1 研究史:筋粘性論と熱産生
   3.2.2.2 Hillの力−速度曲線
   3.2.2.3 その他のタイプの力−速度曲線
    3.2.2.3.1 単一運動における力−速度関係
    3.2.2.3.2 パラメータ関係ではない力−速度関係
   3.2.2.4 力−速度曲線の数学的記述:Hillの特性方程式
   3.2.2.5 パワー−速度関係
  3.2.3 力−長さ−速度関係
 3.3 筋力学における履歴効果
  3.3.1 筋短縮後の張力低下
  3.3.2 筋解放の効果:急速解放法と制御解放法:筋の直列要素
 3.4 まとめ
 3.5 復習問題
第4章 力・エネルギー吸収体としての筋−筋のモデル−
 4.1 伸張中の筋の力学的ふるまい
  4.1.1 伸張中の張力増強
   4.1.1.1 伸張される筋の力−速度関係
   4.1.1.2 降伏効果
  4.1.2 伸張後張力増強
 4.2 伸張後の筋の短縮
  4.2.1 伸張後の短縮における仕事とパワー(仕事率)
  4.2.2 伸張中のエネルギー消費と伸張後に短縮する筋の効率
 4.3 エネルギーの散逸
 4.4 筋の力学的モデル
  4.4.1 Hill型のモデル
  4.4.2 モデルのスケーリング
 4.5 まとめ
 4.6 復習問題

第2部 身体内における筋作用
第5章 筋張力から関節トルクへ
 5.1 力伝達:筋から骨へ
  5.1.1 筋から腱へ
  5.1.2 腱から骨へ
  5.1.3 腱の弾性と等尺性力−長さ関係
 5.2 軟部組織骨格(筋膜)を介した力伝達
  5.2.1 筋膜の構造
  5.2.2 筋腱筋膜結合
  5.2.3 軟部組織骨格(外骨格)としての筋膜
   5.2.3.1 足底筋膜と巻き上げ機構
   5.2.3.2 大腿筋膜と腸脛靱帯
 5.3 筋モーメントアーム
  5.3.1 筋モーメントアームベクトルとその要素
   5.3.1.1 ベクトルとしてのモーメントアーム
   5.3.1.2 回転軸まわりの筋モーメントアーム
   5.3.1.3 解剖学軸まわりの筋モーメントアーム:1つの関節における筋機能
   5.3.1.4 曲線状の経路をもつ筋のモーメントアーム:四頭筋のモーメントアーム
   5.3.1.5 多関節筋のモーメントアーム:矛盾した筋作用
  5.3.2 筋モーメントアームの決定方法
   5.3.2.1 幾何学的方法
    5.3.2.1.1 解剖学的幾何学的方法
     5.3.2.1.1.1 平面幾何学モデル
     5.3.2.1.1.2 三次元幾何学モデル
    5.3.2.1.2 画像幾何学法
   5.3.2.2 機能的方法
    5.3.2.2.1 腱変位法(キネマティックな方法)
    5.3.2.2.2 負荷適用法(静的な方法)
  5.3.3 筋モーメントアームに影響する因子
   5.3.3.1 関節角度の関数としてのモーメントアーム
   5.3.3.2 発揮された筋張力の関数としてのモーメントアーム
   5.3.3.3 モーメントアームのスケーリング
  5.3.4 筋張力から関節トルクへの変換:筋 Jacobian
 5.4 まとめ
 5.5 復習問題
第6章 ヒトの動作における二関節筋
 6.1 二関節筋:多機能筋の特殊例
  6.1.1 二関節筋の機能特性
  6.1.2 二関節筋の解剖学的および形態学的特性
 6.2 二関節筋の機能的役割
  6.2.1 二関節筋の運動力学的解析:Lombardのパラドックス
  6.2.2 二関節筋の運動学的解析:Lombardのパラドックスの解決法
 6.3 二関節筋による力学的エネルギーの移動と節約
  6.3.1 二関節筋の腱作用
   6.3.1.1 二関節筋の腱作用の例示
   6.3.1.2 エネルギー伝達の推定方法
    6.3.1.2.1 1つの関節で関節トルクによって発生するエネルギーと筋によって発生するエネルギー
    6.3.1.2.2 隣接関節で二関節筋によってなされる仕事
   6.3.1.3 腱作用とジャンプパフォーマンス
  6.3.2 二関節筋による力学的エネルギーの保存
 6.4 まとめ
 6.5 復習問題
第7章 動作における遠心性筋活動
 7.1 遠心性筋活動の評価基準としての関節パワーと仕事
  7.1.1 関節における負のパワーと仕事
  7.1.2 複数関節の総合的な負のパワーと仕事
  7.1.3 質量中心の動きの負のパワー
  7.1.4 力学的エネルギー散逸の 2つの方法:着地の柔らかさ
 7.2 選択された活動での負の作用
  7.2.1 歩 行
  7.2.2 階段昇降
  7.2.3 平地,下り坂,上り坂の走行
  7.2.4 着 地
 7.3 遠心性活動における関節トルク
  7.3.1 遠心性活動における関節トルクの最大値
  7.3.2 伸張中と伸張後の力の変化
   7.3.2.1 伸張中の張力増強
   7.3.2.2 ショート−レンジスティフネス
   7.3.2.3 伸張中の張力増強の減衰
  7.3.3 ヒトでの張力増強残留
 7.4 遠心性活動中の筋活動
  7.4.1 遠心性活動中の表面筋電図活動
  7.4.2 遠心性活動中の運動単位の活動
  7.4.3 電気力学的遅延
 7.5 遠心性活動の生理学的コスト
  7.5.1 遠心性および求心性運動中の酸素消費量
  7.5.2 遠心性活動中の疲労と自覚的運動強度
  7.5.3 遠心性運動後の筋痛
 7.6 可逆的な筋活動:伸張短縮サイクル
  7.6.1 正の仕事とパワー産生の増強
  7.6.2 伸張短縮サイクルでのパフォーマンス向上のメカニズム
  7.6.3 伸張短縮サイクルの正の仕事の効率
 7.7 まとめ
 7.8 復習問題
第8章 動作における筋協調性
 8.1 四肢の運動における運動学的冗長性と運動学的不変特性
  8.1.1 手先の直線軌道
  8.1.2 ベル形速度プロフィール
  8.1.3 べき法則
  8.1.4 Fittsの法則
  8.1.5 最小作用の原理
 8.2 四肢の運動の動力学的不変特性
  8.2.1 上肢のリーチ中の肩・肘の関節トルクの共変動
  8.2.2 関節トルク変化最小
  8.2.3 腕のみかけの剛性楕円の向きと形状
 8.3 筋冗長性
  8.3.1 筋冗長性の源
  8.3.2 筋活動パターンの不変的特徴
 8.4 配分問題
  8.4.1 静的最適化
   8.4.1.1 問題の定式化
   8.4.1.2 コスト関数
   8.4.1.3 静的最適化法の正確さ:その方法はどの程度使えるのか
  8.4.2 動的最適化
   8.4.2.1 基礎概念
   8.4.2.2 順動力学問題
  8.4.3 逆最適化
  8.4.4 ヒトのバイオメカニクスと運動制御における最適化法
 8.5 まとめ
 8.6 復習問題

用語解説

序文

訳者一覧

伊藤 純治,川手 信行,中村 大介,佐藤 満,加茂野 有徳,加賀谷 善教,稲葉 康子,山崎 弘嗣