運動生理学の基礎と応用
健康科学へのアプローチ
  • 著:
    長澤 純一(電気通信大学大学院情報理工学研究科)
    杉浦 雄策(明海大学不動産学部)
    古川 覚(東洋大学ライフデザイン学部)
    松井 健(追手門学院大学基盤教育機構)
    柳原 大(東京大学大学院総合文化研究科)
    大西 朋(帝京大学スポーツ医科学センター)
    高橋 淳一郎(至学館大学健康科学部)
    佐藤 和(帝京平成大学現代ライフ学部)
  • 定価:
    2,420円(税込)
  • 頁:
    192ページ
  • 判型:
    B5判
  • 発行年月:
    2016年1月
  • ISBN:
    978-4-905168-39-3

内容

 運動生理学は,組織,臓器,器官のレベルから生命現象を理解し,身体を動かしたときに生じる身体機能の変化や調和を明らかにしようとする学問であり,スポーツ生理学や運動プログラム作成の基礎であり,身体運動による健康の維持管理の根拠としても欠かせない知識である。
 先著,良書も数多く出版されているが,本書は,学んだ知識を再確認しようと考えている学生から研究者までをターゲットとして編集した。
 身体機能の基礎部分を「筋骨格系」,「呼吸・循環器系」,「神経系」,「内分泌系」とそれぞれ独立して章立てし,さらに,健康科学へのアプローチとして「生活習慣病と運動」,「運動プログラムの理論と実践」,「栄養・休養と運動」という応用的な章を配置して基礎部分を展開させた。  また,前半の基礎部分の章では,「構造と機能」,「身体運動との関係」,「トレーニング効果」,「環境の影響」,「成長と老化」および「最新科学」などに触れ,事典的な使い方もできるよう利便を図った。

目次

第1章 筋骨格系
1.筋骨格系の構造と機能
 1)筋細胞と筋線維タイプ
 2)横紋筋と平滑筋
 3)紡錘状筋と羽状筋
 4)速筋線維と遅筋線維
 5)筋収縮のメカニズム
 6)筋収縮の様式
 7)関節角度と力発揮
 8)力・速度・パワー関係
 9)筋腱複合体とストレッチ・ショートニング・サイクル
2.関節の構造と機能
 1)骨細胞と骨の構造
 2)関節の構造
 3)地面反力と骨代謝
3.トレーニング効果
 1)持久的トレーニングに対する適応
 2)筋力およびパワートレーニングに対する適応
 3) SAQトレーニングに対する適応
4.成長と老化
 1)発育発達と加齢に伴う骨格筋の変化
 2)発育発達と加齢に伴う骨の変化
5.最新科学
 1)ミオシンアイソフォーム
 2)アクチニン−3

第2章 呼吸・循環器系
1.構造と機能
 1)呼吸器系
  (1)呼吸器の構造
  (2)呼吸作用とガス交換
  (3)血液による酸素と二酸化炭素の運搬
  (4)ATP(アデノシン三リン酸)の再合成
  (5)酸素摂取量
  (6)酸−塩基平衡
 2)循環器系
  (1)循環器の構造
  (2)心臓の構造,ポンプ機能と循環
  (3)心拍出量
  (4)血液配分
  (5)心拍数と運動強度
  (6)血管の構造と機能
  (7)血 圧
  (8)全身の循環調節と血圧調節
  (9)脳循環
2.トレーニング効果
 1)呼吸器系への効果
 2)循環器系への効果
 3)降圧効果
3.環境の影響
 1)暑熱環境と水分補給
 2)寒冷環境
 3)低圧環境
 4)高圧環境
 5)水中環境
4.成長と老化
 1)呼吸・循環器系の変化
  (1)発育発達の影響
  (2)加齢の影響
 2)持久力の変化
  (1)発育発達の影響
  (2)加齢の影響
5.最新科学
 1)動脈の検査
  (1)頸動脈の内膜中膜複合体厚( intima media thickness : IMT)
  (2)脈波伝播速度(pu lse wave velocity : PWV)
  (3)足関節/上腕血圧比(ank le brachialindex : ABI)
 2)PWVの応用
 3)脳循環予備(cerebrovascu lar reserve)

第3章 神経系
1.神経系の構造と機能
 1)神経系の構造
  (1)中枢神経系
  (2)末梢神経系
 2)機能 −反射における神経系の機能−
  (1)伸張反射
  (2)屈曲反射
  (3)緊張性頸反射
2.トレーニング効果
 1)スキルトレーニングにおける神経系の役割
 2)スキルトレーニングによる脳の変化
 3)アスリートの脳
 4)運動やトレーニングが脳に及ぼす効果
3.環境の影響−生活環境と脳−
4.最新科学
 1)骨格筋から脳へ
 2)自分や他人の動作,動作に伴うさまざまな感覚を正しく認知するための神経機構
 3)シナプスレベルでみつかった構造的可塑性から推定する日々の練習の意味

第4章 内分泌系
1.内分泌系の構造
 1)ホルモンとは
  (1)ホルモンいう語
  (2)ホルモンの特性
 2)ホルモンの分類
  (1)ペプチドホルモン
  (2)ステロイドホルモン
  (3)アミノホルモン(アミノ酸誘導体ホルモン)
2.内分泌系の機能
 1)ホルモン分泌の階層性
 2)ホルモンの作用と受容体の役割
3.ホルモンによる代謝調節
 1)糖代謝とホルモン
  (1)血中グルコース濃度を下げるホルモン
  (2)血中グルコース濃度をあげるホルモン
 2)脂質代謝とホルモン
 3)タンパク質代謝とホルモン
4.身体運動とホルモン
 1)運動時の代謝とホルモン
 2)呼吸循環機能とホルモン
 3)体液と電解質とホルモン
 4) 抗ストレスホルモン
5.トレーニング効果
 1)トレーニングとホルモン
 2)オーバートレーニング
 3)インスリン感受性の上昇
6.成長・老化とホルモン
7.環境とホルモン
 1)環境温度の変化
 2)気圧の変化
8.最新科学−新しく発見されたホルモン−
 1)レプチン
 2)グレリン
 3)アディポネクチン
 4)レジスチン
 5) TNF(tumor necrosis factor)−α 89

第5章 生活習慣病と運動
1.成人病から生活習慣病へ
 1)成人病とは
 2)生活習慣病とは
2.主な生活習慣病の特徴
 1)肥満・肥満症
  (1)肥満・肥満症とは
  (2)脂肪細胞
  (3)肥満の判定基準
  (4)肥満のタイプと肥満症の診断基準
 2)脂質異常症
  (1)脂質異常症とは
  (2)リポタンパク(リポプロテイン)
  (3)脂質異常症の診断基準
 3)高血圧
  (1)高血圧とは
  (2)血 圧
  (3)高血圧の診断基準
 4)糖尿病
  (1)糖尿病とは
  (2)血 糖
  (3)糖尿病の診断基準
 5)メタボリックシンドローム
  (1)メタボリックシンドロームとは
  (2)シンドロームX,死の四重奏,インスリン抵抗性症候群,内臓脂肪症候群
  (3)メタボリックシンドロームの診断基準
3.生活習慣病を引き起こす運動不足
 1)運動習慣
 2)運動不足
4.生活習慣病予防のための運動指針
 1)予防対策
 2)運動指針
5.生活習慣病に関するこれからの研究
 1)オーダーメイド医療による生活習慣病対策
 2)運動習慣によるがんの予防
 3)わが国の健康体力づくりの習慣形成における問題点

第6章 運動プログラムの理論と実践
1.健康と体力
2.運動プログラムとは
3.運動プログラムの流れ
 1)スクリーニング(病気の可能性をみつける)
 2)医学的検査(メディカルチェック)
 3)運動負荷試験
  (1)運動負荷試験の目的
  (2)運動負荷試験中に伴う心疾患合併症
  (3)運動負荷試験の測定項目と測定様式
 4)体力測定
  (1)体力測定の目的
  (2)適正な体力測定の条件
  (3)体力要素と測定項目
  (4)健康関連体力テストの実際
 5)運動の原理・原則
  (1)運動の 3つの原理
  (2)運動の 5つの原則
 6)運動プログラムの構成要素
  (1)有酸素運動
  (2)筋力トレーニング
  (3)柔軟性の運動(ストレッチング)
 7)ウォーミングアップとクーリングダウン
 8)運動プログラムの見直し
4.運動の実践
 1)種目別運動の実践
  (1)ウォーキング,ジョギング
  (2)水中運動
  (3)サイクリング
  (4)テニス
  (5)ゴルフ
 2)慢性疾患の運動療法の実際
  (1)高血圧
  (2)脂質異常症
  (3)糖尿病
  (4)肥 満
  (5)心臓病
5.最新科学

第7章 栄養・休養と運動
1.栄養とは
 1)栄養素
 2)糖 質
  (1)糖質とは
  (2)糖質の種類
  (3)栄養素としての糖質
 3)脂 質
  (1)脂質とは
  (2)脂質の種類
  (3)栄養素としての脂質
 4)タンパク質
  (1)タンパク質とは
  (2)タンパク質の種類とタンパク質を構成するアミノ酸
  (3)栄養素としてのタンパク質
  (4)プロテインサプリメント
 5)ミネラル
  (1)ミネラルとは
  (2)ミネラルの種類
  (3)栄養素としてのミネラル
 6)ビタミン
  (1)ビタミンとは
  (2)ビタミンの種類
  (3)栄養素としてのビタミン
2.運動と栄養
 1)運動とグリコーゲン
 2)運動と脂肪
 3)運動とタンパク質
 4)運動とミネラル・ビタミン
3.運動による疲労
 1)栄養と休養の必要性
 2)栄養と疲労
  (1)疲労関連物質
  (2)エネルギー源の消耗
  (3)基質の物理化学的状態の変化
  (4)調節と協調の障害
  (5)伝達疲労
  (6)中枢性疲労
4.休養の実際
 1)睡 眠
  (1)ノンレム睡眠
  (2)レム睡眠
  (3)睡眠中のホルモン分泌
 2)入 浴
 3)ストレッチング
 4)アイシング
 5)マッサージ
 6)有酸素運動
5.最新科学
 1)運動時のスペシャルドリンク
  (1)水分摂取の重要性
  (2)摂取溶液の内容
  (3)パフォーマンスとアミノ酸飲料
 2)ダイエットのための栄養摂取
  (1)食事誘発性体熱産生(diet− induced thermogenesis : DIT)
  (2)インスリン分泌とダイエット
 3)活性酸素と栄養
  (1)活性酸素とは
  (2)抗酸化システム

序文